須田幸英税理士事務所 事務所通信 令和元年7月号掲載
「据置税率」 
自民党参院選公約で「消費税率を19年10月に10%に引き上げる」と明記されました。これにより、確実に実施されることが決まったと言えます。
私は10%に引き上げることには異論はありません。しかし、軽減税率はいかがなものかと思います。私の周りで軽減税率を支持する人は誰もいません。
 また、軽減税率というと何か安くなるようなイメージがありますが、現在の税率を据え置くだけです。従って標題をあえて「据置税率」としました。

 ところで、総務省統計局の家計調査(2人以上世帯)によると平成30年の食料への支出は73,977円/月平均となっており10月から10%となる酒類、外食を除くと58,594円/月平均となり、これに含まれる消費税は約4,340円となります。
 仮に飲食料品も10%に引き上げた場合約5,425円となり、1,085円の違いでしかありません。
 これを手当てするために税率を据え置くのです。手当が必要としても、その方法はいくらでも別にあるのではないでしょうか?

 企業の経理負担も増えます。私も消費税の納税義務者ですが、事務所用としてコーヒーとトイレットペーパーを同時に購入することがあります。
 例えば、消費税込でコーヒー540円、トイレットペーパー324円を購入した場合、現在は福利厚生費コーヒー他864円とすれば足りますが、10月からはこれを2つに分けて経理する必要があります。すなわち福利厚生費コーヒー864円、福利厚生費トイレットペーパー330円としなければならないのです。

 世間では、年金だけでは2,000万円不足するとかなんとかバカバカしい議論が続いていますが、軽減税率については反対の声はほとんどありません。
 私は一律10%に引き上げ、その使い道を議論した方がよほど有益と思います。

 今後の少子高齢化の更なる進展を考えた場合、消費税率は更に引き上げる必要があると思います。今回軽減税率を導入することにより、次の消費税率アップの時期が早まるのではないかと危惧しています。

 増税は痛みを伴います。誰しも税金は安い方がよいと思うことでしょう。
 しかし、それでは社会が成り立ちません。目先の損得だけでなく、長期的な視野で考える必要があると思いますが、いかがでしょうか?

                所長 須田幸英
 事務所通信7月号掲載
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